「 なまえ」

「…ロイ」


彼女はイシュヴァール人の亡骸の前にたたずむ。


「夜は冷える。そろそろ戻ったらどうだ?」

「ん、もう少しだけ」


手を合わせ目をつむるなまえ。


「何でそんなことするんだ?」

「…だってこの人たち殺したのは私たちだから。意味もなくイシュヴァールの人たちは殺される。違う、殺してるの。だから魂がちゃんと天に昇れるように…」

「そんなことして本当に天に昇れるとは限らないだろ」

「そうかもしれないけど…。でも昇れるかもしれないし」


なまえは話している間もずっと手を合わせる。

彼女は今、イシュヴァール殲滅戦で多大な成果を収めている。
捕らえた獲物は決して逃がさない。
それゆえに冷徹人間や殺戮兵器などと言われてるが実際はそんな人間じゃない。


「…」

「なんかごめんね、変なこと言って」

「いや、大丈夫だ。だが…やっぱりなまえはこんなところにいるべきじゃないと思う」

「それって遠回しに軍をやめろって言ってるの?」

「あぁ」


イシュヴァール人を毎日たくさん殺して、毎晩あんな風に手を合わせ悲しむなまえ。
元から優しい人間なのだ。
だからこそ私はなまえに軍に入ってほしくなかったし、入ってしまった今はやめてほしいと思っている。

なまえは近寄ってきて私の手を取る。


「ロイは前に『自分の手はなまえと違って血で染められてる』って言ってたけどあたしもそれは変わらないよ。もう後戻りはできない。どんなに辛くても私はこの道を進む。自分で決めたわけだし」


なまえは少し切なそうな顔をするがすぐ笑顔に戻る。


「なまえは強いんだな」

「そんなことない、私は弱いよ。…でもロイが隣にいてくれれば私はやっていける気がする。だから…私の前から消えないで?」


君が望むなら


私はずっとそばにいよう。
それで少しでも君が辛い思いをしなくて済むのなら



-END-




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