「おい、なまえよ」
静かだった執務室にリヴァイの声が響く。
「何ですか?」
「コーヒーいれろ」
忙しいから手を止めず目もくれず口だけで返事を返せばまさかのコーヒー…
「さっきペトラちゃんがいれるか聞いていれてくれましたよね?何でその時に頼まなかったんですか?」
「その時は気分じゃなかったからだ。早くしろ」
「…」
理不尽な要求にさすがに手を止めてリヴァイを睨めば彼も早くしろとわたしを睨む。
「…」
「…」
「…はいはい、わかりましたよ」
勿論わたしがリヴァイに勝てるわけがなくわざと重い溜め息をつく。
あーあ、とんだタイムロスだよ。今日だってかなり仕事あるのに。
「副兵長、わたしもう一回いれますよ?」
「いや、大丈夫だよ。わたしのもちょうどなくなるところだったし」
まだ半分以上中身の残っていた自分のコーヒーカップに手を伸ばし中身を飲み干して立ち上がる。
リヴァイの俺様野郎。
***
「もう、何でああいうことするかな」
「あの時が飲みたい気分だったからだろ」
仕事が終わり各自部屋に戻っていく中で残ったわたしとリヴァイ。
あの夜以来、仕事のことで何回も二人きりになる機会はあった。
だけどまるで何もなかったかのように、夢だったかのようにリヴァイはいつも通り変わらずに接してきた。
もしかしたらリヴァイはあの夜のことをなかったことにしているのかも、と勝手に解釈。だからわたしもわざわざ話題を掘り返したりしない。
あれから何日も経過していてわたしの首の痕も薄くなっていた。
「俺の手足になってサポートするって言ったのお前だろ」
「そんな昔の話今さら持ってこないで!しかもそれは討伐での話であって…」
キィーと控えめにドアが開く音がする。
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