「何で?」


「たまにね、なまえのこと抱き締めたくなるし。…この前なんてキスしそうになったんだよね。何だと思う?」


「…それはね、貴方がなまえちゃんのこと好きだからじゃないの?」




おかしいって言うからやっとそのことを自覚してくれたのかと思ったけど違うみたい。
でも、珍しくこの男が人間らしいことを言っていると少し驚いた。




「何言ってるの?俺はなまえに限らないで全人類のこと好きだよ?」




シズちゃんは除くけど、と言う奴の顔は至極真面目で正直呆れた。
こいつは異性を好きになったことがないのかしら。




「そういうのじゃなくて…恋愛感情。大好きな人間たちの中でも特別なまえちゃんのことが好きなんじゃないの?…例えば貴方の嫌いな静雄って人。私とその人が二人で会っても貴方は何も思わないかもしれないけど、なまえちゃんとその人が二人で会ったら嫌だと思わない?」




私を見ながらもキーボードに軽快に滑らせていた指が停止する。
珍しく驚いた顔をしていたけど、それは一瞬ですぐいつもの嫌な笑みに戻ったけど。




「へぇ、そっか。俺はなまえのことが好きなんだ?自分でも気づかなかったよ。波江はエスパーなの?」


「そんなわけないでしょ。第一エスパーなんて存在しないし。…それよりも早く指を動かしてちょうだい」




手を止めて心底楽しそうに笑っている主に向かって冷たく言うけれど聞こえてないみたい。


…今日定時で帰れるかしら?




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「見えない臓器の名前は」
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