「い、いざやさん?」




いつもと違った。

臨也さんの顔は明らかに私の方に近づいて来てる。

何で?とか考えることはいろいろあるんだけど頭の中にはキスって言葉しか浮かばなかった。

2人の距離があと数cm




「いつまで仕事さぼる気なのかしら?」




バン、という音と同時にとてつもなく苛立った顔をした波江さんが入ってきた。

音がした瞬間に臨也さんは顔を私から遠ざけ普通に座った。
多分波江さんには私たちは並んでただパソコンを見てるようにしか見えないだろう。




「ごめんごめん、なまえがなかなか起きなくてさ」


「なまえちゃんのせいにしない。私、今日は定時ぴったりで帰りたいの。だから早く仕事やってちょうだい」


「わ…私、波江さんの仕事手伝います。もう今日の仕事終わったんで」


「あら、ありがとう。…顔赤いけど大丈夫?熱?」


「全然大丈夫です」




訳がわからない。
いきなり顔が近づいてきて…。
っていうかなんであんな雰囲気になったのか。仕事をしてて髪を弄られてて…。

必死に頭の中を整理する。


横目で臨也さんを見てもいつもと何も変わらない顔をしてるし。




「どうしたの?俺の顔になんかついてる?」


「何でもないです。臨也さんが早くくたばらないかなとか考えてただけです」


「…」




嘘をついたりしてみたけど臨也さんが意地の悪い笑みを浮かべたから多分嘘だってわかったんだろうな。


***




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