「鞄くらい自分で持つよ」
「いいのいいの、一応病人なんだから」
保健室にいたときはあんまり気にならなかったけど外に出れば空が赤く染まっていた。
時計を見ればあたしはだいぶ寝てたみたいで帰る時間がいつもより遅い。
「今日彼女はいいの?」
「今日は用事あるんだってー」
それを聞いてほっとしたり。
一緒に帰ってるところを彼女に見られたらまたあたしが修羅場に巻き込まれるし、
いや、でもそんなこと言ったら毎朝一緒に登校してることも問題になるんじゃ…。
とりあえずいろんな思考に蓋をしてお礼を言おう。
「待っててくれてありがと」
「待ってたわけじゃないよ。ただタイミングよかっただけ」
…なんだろ。臨也ってたまに嘘が下手なんだよね。
わざわざ鞄も持ってきてくれたしそれにあたしが起きた時間だって放課後になって30分くらい経ってた。
普段暇人の臨也がそんなに学校残ってるわけがない。
ただ、あたしが起きるの待っててくれたっていう可能性もあるかなって。
自意識過剰かもしれないけど臨也は心配性だからね。
「…」
「…」
しばらく二人の間に沈黙。
別に臨也との沈黙は気にならないけど。
「臨也が保健室まで運んでくれたんだって?ありがと」
「先生に聞いたの?」
「うん。びっくりした。臨也みたく細くてもあたし持てるんだね」
「…俺のことなめてるでしょ?」
ふと臨也を見る。静雄とか京平に比べたら細いけど、でもあたしが思ってるより細くないのかも。
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