君の死角、わたしの正面(3/7) 「ゆいさん、遅くなってごめんなさ〜いっ」 遅すぎだよ、本当に。 だが夕飯後のこの仕事は、夕飯を理由にすれば別に何の問題点もない。 エースにわざとらしく気づいた新入り達が、可愛らしい声でエースに喋りかける。 「やだ、2番隊のエース隊長じゃないですか!」 「初めまして、私たち新入りなんです♪」 そんな会話が行われている中、ゆいは聞いていない振りをしながら洗濯物を別けていく。 聞き耳たてながら… 「お、おう…よろしくな。」 「きゃあ、エース隊長の身体って、凄く素敵っ」 「ほんと、この筋肉素敵〜」 「あ、はは…」 何も言えないエース。 ただ苦笑だけが零れる。 それよりゆいだ。 そう思い、ゆいの方を向けば… パチッ……… 「いッ……」 こちらにまで聞こえるほどの、大きな静電気。 洗濯機に触れるだけで、あんなに電気が発生して大丈夫なのか、とエースはゆいの元へ行く。 「お前、大丈夫か? すんげー音なったぞ?」 笑いながらエースは静電気の起こったゆいの右中指を摩る。 ゆいもえへへ、と笑いながら中指を見る。 「びっくりだよっ わたし、電球なのかな?」 「どーゆー意味だよ、それ! 電球は静電気関係ねーだろっ」 ほら、ここ掴んで触れたら電気来ねぇよ、とエースはゆいの手を壁につける。 楽しそうな2人の表情に、後ろの新入り達は楽しくなさ気だった。 ← | → |