君の死角、わたしの正面(2/7) 「ふぅ、次はパパんとこに雑巾掛けだ…」 ゆいはバケツを持ち、水をくむ。 ギリギリまで入れた重いバケツを持ち上げ、歩きだす。 「グラララ、今日も1人かァ?」 白ヒゲに言われる。 そりゃあそうだ。 あねナース達を船に乗せたのは、紛れも無く船長である白ヒゲなのだから。 不思議そうに見ている白ヒゲに、ゆいは言う。 「あ…あれかな? ま、迷子…かな?」 下手くそな嘘。 本当はサボりだろう。 それを知っていても、サッチが白ヒゲに怒られる気がして、言えなかった。 下手くそな嘘をグラララと飲み込んでくれたのは、きっと白ヒゲだからだろう。 結局、この日も全部の仕事がゆい一人で行われた。 最後の夜の洗濯には、必ずエースが付き添ってくれる。 ふと気になったエースはゆいに尋ねた。 「新入りは仕事やらねぇのか?」 ドキッとなった。 まさか1日目からエースに心配かけてしまう…なんてことは…… すると、洗濯所のドアが開き、新入りナース達が運よく入ってきた。 チラリとエースの方を見れば、ナース達の顔色が変わり、ゆいにニコニコしながら言った。 ← | → |