着てみてごらん。(1/6) 「〜〜〜〜♪」 鼻歌を歌いながら、クローゼットの片付けをするゆい。 まさか、あんな物が出てくるだなんてこの時は思ってもみなかった。 「あれ?」 奥の方から出て来たのは紙袋。 何の紙袋だろう。 見覚えはバッチリあるんだけどなぁ… この間買った服かな? そう思い、ゆいは紙袋をあければ… 「げ……っ」 すっかり忘れていた。 というか、思い出したくなかった。 そう、この紙袋の中身は紛れも無く、ずっと前にゆいが先輩ナースと賭け事に敗れ、買う嵌めになった下着。 カラフルだし、少し刺激的な。 「エースにばれたらヤバい…」 グシャッと紙袋の口を塞げば、どこからともなく聞こえる声。 「呼んだか〜?」 ガチャッとドアを開けて入ってくる本人。 ゆいはドキッとして冷や汗が出る。 ずっと前は部屋に入ってくるエースを簡単に止めれたが、今となっては止めれる要素がどこにもない。 振り返り、引き攣った笑みをエースに向ける。 「よ、呼んでないよ…っ」 「ほんとか? さっき聞こえた気が…」 何故こういう時だけ地獄耳なのか… 絶対外まで聞こえる声ではなかったのに。 急いで紙袋をクローゼットに仕舞おうと、立ち上がった瞬間、エースに後から抱きしめられた。 「わあ…っ」 ドクンッと心臓が鳴る。 正直言って、抱きしめられるのはいつもの事である。 だが今は状況が状況だ。 焦ったゆいは思わず紙袋を落としてしまった。 「おい、大丈夫か……て。」 落とした紙袋から出てくる下着達。 ああ、何もかも終わりだ…。 下着がエースの目に留まってしまった。 ← | → |