必要で、不必要。(5/6) 「エースが怪我して帰ってきた時、わたしが治してあげたいから!」 自分がちょっとでも怪我して帰ってきたら、すぐ泣きそうな顔するゆい。 掠り傷じゃ死なねぇから、な? そんな会話をした記憶もある。 寧ろドジなゆいの方が怪我する頻度は高いはず。 そんなゆいからの、頼りないけど嬉しい言葉。 ガキかよ、こいつは… そう思うのに、恋人として可愛いと感じてしまう。 「馬鹿だな、お前は。」 「えっ!!?…なんで?」 先ほどの可愛らしい笑みから一変し、キョトンとするゆい。 馬鹿なことは言ってない…はずっ 焦るゆい。 エースは持っていた本をパタンと閉じた。 「必要ねぇ勉強、してるから。」 「必要…ないの?」 「ああ。」 ゆいは本を見て、必死にいるかいらないかの区別をしている。 無論、エースが言いたいのはそう言うわけではなくて。 天然の思考回路が詰まったゆいの頭を、エースは中指で弾いた。 「いたっ……何するの〜!」 「考える方向がちげーだろ。」 「ほ、ほうこう…?」 「ああ。」 そう頷けば、ゆいをすぐに腕の中に閉じこめてしまうエース。 抱きしめれば改めて思う、ゆいの小ささ。 大きなエースには小さなゆいが不思議で仕方ない。 ゆいも気付けばエースの腕をぎゅっと握っている。 エースはいつでも凄くあったかい。 「だいたい俺が怪我する前提で話を進めやがって…」 「だってエース、炎だけど…血、出るじゃんっ」 「そりゃ人間だからな…、 それにな、俺はお前が居るだけでどんな傷も治んだよ。」 意味を理解してなさ気なゆい。 驚いて自分の手を見ている。 いやいや、生まれながらの…とかじゃねぇから。 ← | → |