春風さらさら(5/8) 明くる日、ゆいはきっちり洗濯バサミを確認して、第2弾の洗濯に取り掛かろうとしていた。 この船のナースは、どの人も美人でスタイル良くて… クルーとの夜遊び等も多い。 まだゆいは新入りである上に、なぜこんな姿のナースがこの船の上に存在するのだろう、と思える程 小柄である。 先輩達と一緒にいると、完全に浮く訳だ。 自称18歳のゆいに、夜遊びの経験はなく、寧ろ恋人を作った経験すらないのだ。 「自称18歳…に見えないかな、この身長…」 くーっと背伸びをしてみるも、鏡に映る姿は先輩達とは重ならない。 魅力がないのも自覚済み。 色気がないのも自覚済み。 「…あたし何にもないじゃん!」 思うと馬鹿馬鹿しくなって、笑みが零れた。 洗剤を入れて、洗濯機の蓋を閉めた。 ふぅ、と一息ついたところだった。 「あぶねぇ、避けろ!」 後から声がした。 振り返ったときには、何が起きたのか解らないまま、頭に鋭い痛みを感じ、視界が暗くなった。 ← | → |