火拳のエースと小さなナース | ナノ

必要で、不必要。(4/6)








用事があるって言うから誰か居るのか、と思ったが、別に誰もいないし何も変わらないゆいの部屋。


入って明かりを付ければ、ゆいはそそくさと机に向かう。

ひょいと見て見れば、そこには何冊も分厚い本が乗っていた。



「なんだこれ…」



「本だよ?」



見れば分かる、そこを聞いている訳じゃねぇよ。

エースはぱらぱらと本を捲れば、字がカツカツで、絵本を読んでそうなゆいのほんじゃないだろ…と思うエース。



「ゆい、本なんか読めんのか?」



「し、失礼なッ!
字は読み書きできます〜!」



「これ、読めてんのか?」



「…少しずつだけどね、ちゃんと解るようになってるよ。」



何を書いているのか分からないが、偶に絵が載ってある。

意味の分からない線がいっぱいの絵に、何の本かはあまり理解出来ないエース。



「これね、先輩に借りたの。
先輩がナースのお勉強してた頃に使ってたんだって。」



「へぇ…こんな難しいの。」



「うん、でも私はナースじゃないから…」



見た目は立派なナースだけど、ナースにはなれない。

知識不足、そして経験不足。


エースだって知ってる。

ゆいがナースになれる環境で居なかったこと。


少し暗くなるゆいの頬に、優しく口付ける。



「…頑張るんだろ、今から。」



「うん…!
ちゃんと先輩のお手伝いできるようになりたいから、」



「そうか。」



「それにね、」



「?」



ん?とゆいを見るエース。
ゆいは満面の笑みを浮かべて言った。






 








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