エースがいいから…(1/7) 「広い街だね〜」 「ああ、人多いなぁ、」 上陸したのは凄く都会な街だった。 そこまで親父に計算されていたのか、たまたまなのか… まあどちらにせよ、買い物だ。 「ゆい、あの店入ってみるか?」 「うん!」 手はぎゅっと繋いだまま、人の波に攫われないようにエースはゆいを引いた。 服や靴、鏡や髪留めなどと言った、本当に生活用品を買いそろえたエースの両手は紙袋でいっぱいだった。 別にゆいが欲しいと言った訳じゃなく、「可愛い、」とか「綺麗、」とか言ったものを全部エースが買っていった。 意外と生活に必要なものを「部屋にないのか?」と聞けば、頷くモノが多かった。 「先輩にかりたり…」とか凄く申し訳なさそうな顔をしているゆいを見れば、片っ端から買ってしまう。 「エース、いいのこんなに…」 「ないと困るだろ、 気にすんな、親父の金だ。」 「ぱ、パパに悪いよ!」 「くれるっつってんだ、貰っとけよ。」 「…うん、パパにありがとうって言わなきゃね。」 「おう、それでよし! …どっかで飯でも食うか?」 「うん!」 気付けばお昼時はとっくに過ぎていた。 すぐそこにあったお店に入る。 椅子に紙袋を乗せ、座るエース。 その真ん前にゆいも腰を下ろす。 凄くドキドキする。 初めてレストランで食事をするゆい。 「何か食いてぇもんあるか?」 エースの差し出す注文書に、ゆいはドキッとする。 何も言わないゆいに、多分初めてなんだろうな…と思い、ニッと笑った。 「んじゃ、一通り全部頼むから、食いてぇもん食え。」 「ぜ、全部頼むの!?」 「おう!」 そう言いエースは店員を呼び止め、頼む。 ゆい以上に店員は目を丸めた。 冗談ですか、 そう言いたそうな顔だ。 エースの食欲は、毎日食事を共にしているゆいは十分承知だが、さすがに少し驚く。 どんどん流れてくる料理に、テーブルは一杯だ。 ← | → |