愛してるのは、ね?(5/6) 「ゆいは元々、金持ちの奴隷だったの。」 その言葉に、目を丸めるエース。 てっきり、どこかの綺麗な町でシャンクスの娘だって事を隠して生きてきたのだと思った。 あんなに毎日可愛らしく笑って、楽しそうに微笑むゆいの知らないところを知って、少し胸が苦しくなった。 「…まじかよ。」 「ええ。この船に来た時は酷かったわ。 服はボロボロで、足と手首に鎖を付けて…体中傷だらけ、栄養なんて足りたもんじゃ無かったわ…あんなに細い身体で…」 「今より細かったのか…?」 「細いとか言ってられる場合じゃなかったわ。…今にも死んでしまいそうなくらい。 無表情で笑いもせずに泣きもしない…ずっと震えてた。」 今のゆいでは想像が付かない。 笑わないゆいってどんなんなんだよ… エースはぎゅっと拳を握った。 「でもゆいはちゃんと生きてる。 あの頃のゆいが正直、ここまで笑える子だとは思わなかったけど…私たちはゆいに毎日、たくさんの幸せを貰ってるわ。」 「良い子よ、ほんとうに…」 「あいつにそんな事が…」 この間の事件があって、その前にもずっとこんなに酷い目にあって… ゆいはこれから幸せにならないといけない。 誰がどんな事情であっても、ゆいの幸せを奪ってはいけない… もう傷ついてはいけない。 ゆいの事を護ってやりたい… 「ナース、時間あるか? 俺もひとつ、聞いて欲しいことがあるんだ。」 「ええ、構わないわよ。」 マルコ同様、エースはナースにあの事件のことを話した。 ゆいが奴隷だった。 その事を聞いてからか、無性にあの事件の野郎達に腹が立った。 ゆいが泣きついてきた夜を思い出せば、手が震える程… 「そう…そんなことが…」 「許せないわね。」 「そんな男、この船を降ろすべきだわ。」 「女を何だと思ってるのかしら!」 次々に怒りを吐いていくナース。 こんなナースは初めて見た。 それだけゆいは、この船のどこでも愛されているんだ…そう思った。 マルコやサッチだって、 ナースだって、 親父だって… 俺だって。 「ゆいが悲しそうに泣くとこ、もう見たくねぇんだ。」 「そうね、私たちもゆいには笑ってて欲しいわ。」 マルコと一緒… みんなゆいに笑ってて欲しい。 ゆいの笑顔はすぐに浮かんでくる。 それぐらい、今はよく笑っている。 ← | → |