春風さらさら(3/8) 船尾までタオルを追い掛けるゆい。 手のに届きそうな距離にあるが、なかなか掴めない。 ハッと勢いよく跳べば、大人しくタオルは掴まる。 ゆいは嬉しそうに笑みを零すが、それもつかの間… 「…うそッ」 勢いよく跳んだまでは良かった。 だが、跳んだ先は青く綺麗な海の上。 落ちる。 一瞬で全てが理解できたが、もう落ちるより他はどうしようもない。 目を閉じて、冷たい感覚を待った。 その瞬間、首が締まった感覚が降り注いだ。 「ぐぅぅう…っ」 襟元を誰かに掴まれたのだ。 助かった、と目を開き ホッとする。 「お前、死ぬ気かよい…」 この声は…! と思い、引き上げて甲板に下ろしてくれた人を見上げる。 「助かった〜っ! 心臓止まっちゃったよ〜」 「今は動いてるのな。」 「そりゃあ、止まっちゃったら死んじゃうでしょ?」 「いや、今お前止まったっていったじゃんかよい。」 「気がしたんだよ、 気分、気分!」 そう言って、助けてくれたマルコに満面の笑みを送るゆい。 「どんな気分だよい…」と呆れた表情をするマルコだが、彼自身はゆいの笑みに照れたのを隠しただけ。 ← | → |