春風さらさら(2/8) 「ふぁ〜っ」 思わず零れてしまう欠伸。 手で隠すことなく大胆に口を開ける、ナース姿の女がいた。 ここは白髭海賊団の船の上である。 そして、一人ポツリと洗濯物を干している赤毛のショートヘアーの小さな美女、ゆい。 誰が見ても小柄な身体、ナース服から伸びた白い肌に、ふわふわの毛が上に着いた黒いニールハイソックス。 「終わった〜!」 ふぅ、と気を抜いた瞬間、春風がビュッといきなり吹いた。 うぅ、と小さく唸ったゆいだが、次に吐かれた言葉はそんなに可愛いものではなかった。 「…うわああああっ なんでっ!!?」 洗濯バサミをうっかり付け忘れてしまったタオルが、次々に舞い上がった。 急いで拾い集めるが、何枚かは海にヒラヒラと… 「まてぇ! このッ、タオルのくせにッ!」 完全に春風に遊ばれているゆい。 タオルを集めるのに必死なゆいに、次々と風を送る。 小さい身体を細い脚で空高く跳ぶ。 決して能力者な訳でもなく、戦闘経験がある訳でもないゆい。 息を切らしながら、それでもタオルを追い掛ける。 ← | → |