火拳のエースと小さなナース | ナノ

悪いものは悪い(2/6)









結局、俺だったら…なんてエースも悪乗りしながら楽しく盛り上がるが、話が途切れてしまう。


そして、一人のナースが空気を変える。



「………で、どうして噛まれたのかしら?」



あんなに盛り上がっていたのに、まだそれを聞いていなかった。

あー、とエース自身も忘れていたみたいで。


エースを見つめるナース達にわざと跡を見せながら言ってやる。



「それがよ、朝のゆいの寝顔があまりにもエロくてよ。
昨日はあんなにヤったのに、すんげームラムラしてきて。」



「襲おうとしたら、噛まれたってわけね。」



「いや、襲ったら噛まれた。」



エースの馬鹿っ!!って部屋追い出されて…まあ昨日の晩は本当に意識飛ばすまでヤってやったから、ダメだとは思っていたけど。


黙々と語るエースに、ナース達はまた笑いはじめる。



「噛むだなんて、ゆいも本当に限界だったのね。」



「ほんと、あの大人しいゆいが、ね?」



「ゆいに同情するわ。」



「…なんだよ、急にゆいの肩持ちはじめて。」



「あら、女が女の味方しちゃ悪いかしら?」



「わたし達はいつでもゆいの味方よ?」



よく言う、さっきまでゆいをどうイジメてやろうか一緒に盛り上がっていたくせに。


女はずるいって奴だ。


ナースを敵にまわすほどこの船で恐ろしいことはない。

この船での名言にまでなっている。


まあそんなことが名言だと言える時点で、この海賊船がいかに平和であるかがわかる気がする。



フッと笑ったナースは救急箱を机の上に置き、足用であろう幅の広い包帯を取り出した。



「そうね、怪我人さんの手当は包帯でどうかしら?
噛まれた跡がちゃんと見せびらかされないように、しっかり巻いてあげるわよ?」



甘く囁く口調で悪魔のような言葉を口にする。

それは、別に怪我人として包帯を巻いてもらいに来た訳ではないエースのことを分かった上での言葉。


そして、これからいろんな人にその跡を見せに行こうという単純な考えを読んでの言葉。


スーッと長く細い中指で撫でられる噛まれた跡。
この女は凄くレベルが高いことがそれだけでわかる。


ねぇ、エース隊長?なんて耳元で囁かれれば、普通はいい反応するんだろうけど。



「せっかくだけど、遠慮しとくな?
それよりうちの猫にもそれ、教えてやってくれよ。」



「ふふ、ほんとにゆいのこと好きね?」



「ああ、噛まれてもすぐに傷口舐めに寄って来るんだぜ?
こんなに可愛い猫、そういねェよ……なあ、ゆい?」



ふとエースは扉の方へと視線を送る。


数センチだけ開いているドア。

そこではビクッとしたのか、急にドアがカシャッと音を立てて閉まる。


あまりにも不自然な光景に部屋の中から笑いがこぼれる。





 








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