誘惑には素直に。(2/5) ゆいはすぐ横にある目覚まし時計まで手を伸ばし、それをエースの頬に押し付ける。 まるで退け、と言っているみたいに。 「冷てぇ。」 「今、何時?」 目覚まし時計を人の頬に押し付けてる癖に、何時か読めだと。 夜中の2時にして、針を止めてやりたいぐらいだ。 まあそんな事をすればゆいに痛い目見るが。 「…昼過ぎ。」 「明るいね?」 「いや…雨降ってるから暗いぞ?」 「う……っ」 自分で言っといて、一人で自爆したゆい。 何でこんなに弱いんだよ。 恐ろしく可愛い。 ムッときたのか、押し付けてる目覚まし時計をエースの頬にグリグリと捩りはじめた。 そんなゆいに、思わず笑うエース。 「…普段この時間はゆいと一緒にいねぇんだ。 だから雨の日は嫌いじゃねーよ。」 そんな事を言えば、頬から冷たい目覚まし時計が離れる。 ムッとした頬が笑う。 ゆいの機嫌もどうやら回復に向かってそうだ。 「たまにこの時間でも洗濯干してる時、来るくせに。」 「なんだ、今日は一段と文句が多いな…!」 ゆいの頬を緩く摘む。 それでもゆいは悪ふざけした時の目をエースに向けていて、謝る気はないらしい。 「いひゃい!」 「素直じゃない可愛くない口は、どの口だ?」 頬を放してやると、ゆいはまた小さく馬鹿と言う。 可愛くないので、キスして塞いでやったエース。 非常に満足げだ。 「サッチに言い付けてやる〜!」 「はあ?何を?」 「エースはキス魔だって。」 「いや、お前にだけな。」 その言葉に、外見は怒った表情だが内心、嬉しそうなゆい。 どれだけ単純にできてるのか… だいたい今のキス1回でキス魔は言い過ぎた。 今日に入ってまだ8回目のキス…、やっぱりやりすぎか? 今度サッチに、恋人の1日のキスの平均回数でも聞くか。 ← | → |