おやすみのキスをしよう。(1/6) 何だかんだあって、あれから3日が経った。 医務室ですやすやと眠るゆいは未だに起きない。 点滴をずっと打っているので、今は栄養が足りているらしい。 ゆいは栄養失調だと言われた。 ナースも毎日顔を合わさなかったから、全然気づいてやれなかったらしい。 毎日、親父に呼ばれようとここを動かないエース。 自分が手をかけた…腫れた頬にあててある、水につけたタオルを毎日何十回も替えた。 ゆいの寝顔はいつもと変わらず、気持ちよさそうだ。 「だいぶ腫れは引いてきたみたいね。」 カーテンを開けてナースが入ってきた。 ナースの言葉に頷けば、ふふっと笑い声が聞こえる。 「ゆいの寝顔、幸せそうね。」 「ああ、いつも俺の横でこんな寝顔してやがった。」 「そう…頑張ったんだもの、ずっと休暇をあげたいぐらいだわ。」 「起きたら言ってやれよ。 毎日ゆいが暇そうにしてりゃ、ちゃんとこの間まで無駄にした時間取り戻してぇしな。」 ゆいから目を離さず、静かに笑うエース。 本当に無駄にした時間を惜しんでいる…そんなエースの気持ちがナースに伝わる。 「失ってから初めて気付く事だって、少なくはないのよ。 …もうゆいを離しちゃだめよ。」 「頼まれても、もう離れるなんざごめんだ…」 「たくさん愛してあげて…小さい頃から愛されなかった子だから。」 「ああ。 ゆいにとって俺が最初で最後の恋人でいてぇからな。」 そんな事を言えば、ナースは「それは独占欲じゃないの?」と笑う。 愛でも独占欲でもゆいだったらなんでもいい。 ナースはゆいの腕に繋がる点滴の目盛りを読み、ゆいの腕から点滴針を抜いた。 消毒用のアルコールが付いた綿を針の刺さっていた所に付け、エースを呼んだ。 流石にエースも、3日も同じ事をやらされているので、その後の行動は解った。 ゆいの腕の上で綿を1分程押さえて、綿を捨てる。 その間にナース点滴を持ってどこかへ出て行った。 先ほど押さえていた部分。 いくつか白い腕にぷつぷつと赤い点があるのが分かる。 こんなに毎日のように針を刺されていれば、そうならなくもない。 そんな細い白い腕を見ていると、その先の指がピクンと動いた。 力が入ったのか、シーツを握ろうとしている。 そんなゆいの手をエースは握った。 ゆいの眉間に寄る皺。 そして、ゆっくりと見える綺麗な瞳… 「………え、…す…?」 ← | → |