海に消えてしまう前に…(4/6) エースはゆいを抱きしめる腕をとき、ゆいの腫れた頬に手を当てた。 「ごめんな…痛かっただろ…っ」 エースの親指は涙を払いながら優しく頬を撫でる。 痛くない… こんなの、痛くなんか…! 首を振るゆい。 「エース、わたしが消えたら…嫌? まだわたしのこと、愛してくれる?」 頬にあるエースの手を握る。 「当たり前だろ…! お前以外…愛せる気しねぇよ!」 「そっか…よかった……」 徐々に弱くなるゆいの声。 瞳を閉じたゆいはぐったりとエースの方へ倒れてきた。 しっかりゆいを支えるエースは、ゆいを揺する。 「っ!…おい、ゆい! しっかりしろっ!…くそっ」 エースはゆいを抱えれば、がむしゃらに走った。 濡れた身体から水滴を落しながら、医務室へと駆け込む。 ドンッと大きな音を立てながら医務室の扉を開ければ、驚いた顔のナースがこちらを見ていた。 「エース隊長…?」 「頼む、ゆいが……っ」 濡れている二人から仄かに漂う潮のにおいに、海に落ちたということがナースにも理解できた。 それよりゆいだ。 酷く弱い呼吸に、久しぶりに見れば前よりも細くなった身体。 ナースにゆいを預けたエースは、その場に立ち尽くした。 ← | → |