海に消えてしまう前に…(2/6) 手すりに登れば、風が私を海へと誘う。 浮いた… 目を閉じれば、もうすぐ海かな…と足の感覚が敏感になる。 「ゆいッ!!!!!」 パシャン…ッ 感じた冷たさと水が弾く音ともに、誰かが自分を呼んでいた。 でも、もう何だっていい。 疲れちゃったんだよ…きっと。 パシャン…ッ もう一度、水の弾く音が聞こえて、目を開ける。 誰か…いる。 「エース…っ」 悪魔の実を食べた能力者は泳げないのに。 なんでエースは海に来たの? 必死に腕を伸ばすエース。 泳げてないのに、どうしてそこまで… 「ゆい!」 伸ばしてくるエースの手に、不意に伸びる自分の手… なかなか掴めないけど、必死にエースの手を求めて手を伸ばす。 引いたり押したり、波が邪魔する中、指先が掠れる。 もうちょっと…! 一気に近づいてきたエースの大きな手は、ゆいの細い腕をしっかり捕まえた。 グーッとエースの元へ引っ張られる。 そして、冷たい海とは裏腹に、懐かしい温かさがゆいを包む。 そんなことより息が続かなくて、ゆいは苦しそうにもがけば、唇に何かが当たる感覚… 近くない海面に向かって、二人の口から零れる空泡。 エースが空気をくれてる。 泳げないエースに変わって、必死に海面までエースを連れて上がるゆい。 「(もうちょっと…!)」 ザブンッと音とともにはい上がってきたゆいとエース。 大量に空気を吸う。 エースが溺れないように…しっかりエースを抱きしめながら… ← | → |