疵口に響いた真実(6/7) どうすればいいのか。 こんなこと、望んでた訳じゃないのに。 「…なん、で…?」 「お前、惚けてんなら怒るぞ?」 何を惚けなければならないの? 「わたし、惚けてなんかないっ」 「本気で言ってんのか? …たち悪ぃ女だな!」 今まで浴びせ掛けられたことのない、エースの口調。 飛んできた拳は頬に鋭い痛みを与えた。 熱い。 気付いたら、視界にはエースじゃなくて冷たい床。 「…もう俺の前に現れんじゃねぇ、 …消えろッ!」 そして廊下を歩く音が遠ざかる。 ゆいは立ち上がり、頬を押さえながら走った。 エースの行く先とは違う方向へ。 「おい、エース… 何で殴った?」 低いマルコの声にエースは立ち止まる。 エースは舌打ちしてマルコを無視し、歩き出す。 そんなエースの肩をマルコは掴む。 「お前に関係ねぇだろッ!」 「関係ねぇ訳ねぇだろッ!」 二人の声は廊下に響く。 静まりかえる空気に、エースは鼻で笑って言った。 「ふ…っ 人の女盗っといて、それか。 そりゃ関係ない訳ねーな。」 「エース、てめぇ何勘違いしてやがるぃ?」 「ああ? ゆいの次はマルコまで惚けんのか? 勘弁してくれよ、マジで。」 そんな態度のエースに、マルコの頭はプチッとキレた。 エースの肩を掴み、物凄い勢いで壁にたたき付ける。 そして、エースの今まで聞いたことのないようなマルコの怒り声がエースの耳に入る。 ← | → |