疵口に響いた真実(3/7) 「…ゆい?」 洗濯物を乾しているゆいは名前を呼ばれた。 聞き慣れた優しい声に振り返れば、ナースの先輩がいた。 「先輩…?」 「やっぱり… あなた、何かあったの?」 洗濯物の皺を伸ばすゆいは、小さく笑って首を横に振った。 「何にもないですよ。」 「嘘ついたって、何にも変わらないわよ。 …エース隊長の事だって噂になってるし…「何にもないんですよ…!」 エースという単語に反応したゆいは、思わず叫んでしまった。 ハッと口を塞げば、先輩ナースは静かに抱きしめてくれた。 「…ごめんなさいね。 気付いてあげられなくて。 この間、新入り達には注意したの。仕事しなさいって。 でも、返事するだけでクルーとお喋りしっぱなし。 …ゆいは忙しそうに働いているのに。 昼休みまでゆいが来なくなったから…一人でやってたのね、今まで。」 先輩の言葉に、涙が溢れた。 久しぶりの先輩。 新入りナースの味方をすると思ってたのに、わたしの事を解ってくれていた。 嬉しくて… 「…せん、ぱい…グスッ…わた、し……っ」 「辛かったわね。 …こんなに痩せちゃって、やっぱり色々抱えてたのね。 少しずつでいいわ、ゆっくり話してちょうだい。」 優しく頭を撫でてくれる先輩。 やっぱり先輩は優しくていい人だ。 きっと全部話しても大丈夫。 暗い心に、光りが差した気分だった。 ゆっくり流れる時間。 そんな中で、ゆいは先輩ナースに今までの事を全部話した。 ← | → |