誰にも聞こえない、(1/7) 朝、ストライカーに乗るエースにゆいは手を振る。 エースも微笑みながら手を振り返す。 「エース、気をつけてね!」 「おう! ゆいも、あんまドジすんなよ!」 「し、しません〜っだ!」 「ははっ」 笑顔でエースが見えなくなるまで、甲板でずっとエースを見つづけた。 その横には、一緒に見送りにきたマルコがいる。 そして、少し離れたところに新入りナースが数人。 やっぱり格好いいわ〜、などと話しをしているのが耳に入るが、気にしてない、ふり。 エースの向かった方の空を見て、切なそうにするゆいに、マルコは声をかけた。 「淋しいかい?」 ゆいはコクンと頷く。 「うん、でもみんな同じだから。 マルコが行っても、わたしは淋しいよ?」 「ふ、やめてくれよい。 エースが今の聞いてたら、俺確実に黒焦げじゃんかよい。」 「鳥の丸焼きだねっ」 「こいつ、どつくぞぃッ!」 「きゃ、マルコが怒ったから洗濯しよ!」 「逃げんなよぃ! 全く……」 ゆいは笑いながらマルコの側を後にした。 マルコも、そんなゆいに穏やかな表情をしている。 それを見ていた新入りナース達がコソコソと何かを話していた。 それに少し気になったマルコだが、まさかそんな…と思い、その場を後にした。 マルコが見る限り、新入りナースは9人の集団を作って一緒にいる。 サッチがその集団に話しかければ、愛想よくサッチを褒めまくるし、気に入られようとしているのか… 自分にだって、しょっちゅう女な視線で喋りかけてくる。 いつも暇してるみたいだが、医務室にいる先輩ナースとその横で働くナースは仕事してるし、ゆいだっていつもみたいに1人で洗濯場にいたり、親父の所で掃除してたり… なんでゆいは人手が増えたのに、1人で雑用してるのか? それに、毎回喋りかけてくる暇そうな新入りナース。 そういえば、先輩ナースが新入りナースと喋っているのはよく見るが、ゆいが新入りナースと喋っている所は見たことがない。 「…まあ考えすぎだ、俺ぃ…」 ナースに絡めば、後がややこしくなりそうた。 それに今さっきのゆいを見れば、別に何かある訳でもなさそうで… 女はややこしくて解らないから、深入りしないことにしよう。 ← | → |