生徒会長と副会長(1/3) この時間の体育館は何をしているのか…そう考えたが、見た方が早かった。 エースはゆいを体育館に入れると、舞台の上に跳び上がった。 大勢の人が拍手する中、エースはマイクを握って言った。 「えー、えー、あ、あ。ごっほん。 俺が伝えたい人は、この学校の生徒会長だ!」 そう。 この時間の体育館での出し物は、うちのクラスの出し物で… 自分が普段言えない事を、その人に舞台の上で伝える。 これは、毎年どこかのクラスが出し物として出していて… 生徒会長、と言う言葉に、沸いていた体育館中が静かになる。 もちろんゆいも、息を呑む。 「生徒会長って、まあ世界で1番目ぐらいに可愛いけど、無口だし睨むし喧嘩強いし、怖ぇよな。 つい昨日なんか婆さんに絡んでたヤンキーの奴らをボコボコにしてたの見たぜ。」 エースの作る動作と喋り方に、会場に笑い声が聞こえる。 だが一段落付けばエースの顔が真剣になった。 「…でもな、あいつはいい奴なんだ。思わなかったか? 婆さんを助ける為に、喧嘩するんだぞあいつは。 ヤンキーにゆいから絡んだとこ、見たことあるか? まあニケツとかは目つぶれよ。 あいつはちょっと不器用で無愛想だけどよ、この俺が保証する! いい生徒会長だ! お前らが知らないだけで、あいつはツンデレってやつた! 探せばデレだってある。 …そんなあいつを悪く言う奴は俺が許さねぇ! 俺はこの学校に来たときから、ずっとゆいが好きなんだ! 今までにねぇくらい惚れてるんだ。 だから生徒会長お ゆい! 俺と付き合ってくれ!」 体育館中に響いたエースの声。 最後の言葉を言い終えたエースに、喝采と拍手が上がる。 ゆいはステージを向いたまま、ただ目を見開くだけだ。 そんなゆいに、後ろから声をかける。 「行ってやれよい。」 ほぼ返事待ちな会場。 マルコの声に押されながら、ゆっくりと舞台の方へ歩く。 ぎゅっと手を握る。 舞台の上に立つのに、こんなに緊張したのは何年ぶりだろうか。 ← | → |