触れてしまった自分の心(8/8) 「やめろ! お前の相手はあたしじゃないだろッ!」 拒んでしまった。 そう思った自分は、少しは期待していた最悪な奴だろう。 「誰でも優しくすればいいと思うな!…誰でも…っ…そんなんで喜ぶと思うなっ…そんなに人で遊んで…楽しい、か…っ…!」 涙がポロポロと出てきて、上手く喋れない。 エースの顔がよく見えない。 何を言われるのだろう。 笑われるだろうか、 お前なんか、って。 それでもいい。 もうこんなに辛いのは、嫌だから。 「…俺が誰でもこんなに簡単に女を抱きしめると思うか?」 「ぇ…?」 「俺だってな、好きな女じゃなきゃこんなに喋りかけねぇし、泣きそうな顔見て目薬も渡さない。 副会長だってとっくの昔に止めてる。」 唖然とするゆいを、エースはちゃんと抱きしめる。 あの時と同じ、暖かい胸で。 「…彼女いるのに、か。」 「彼女なんていねぇよ。」 「嘘だ…あたしは昨日見たんだ。」 「昨日…?」 あの光景を思い出す。 きゅっと捕まれるエースのカッターシャツ。 ああ、と思い出したエースは言った。 「告白された時か?」 「こ、告白…!?」 「ああ、何か知らねぇけど、急にキスされて好きって…まあ俺はゆいが好きだから付き合わねぇって言ってやったけどな。」 ニカッと笑うエース。 こいつは… 「馬鹿だ…お前は馬鹿だっ」 エースの胸に額を擦り寄せ、呟く。 そんなゆいの頭を撫でるエース。 「はは、そんなに馬鹿って言うなよ。…あ、そうだ。」 エースは何を思い出したかのように時計を見る。 エースを見て、ゆいは顔を上げる。 すると、勢いよく立ち上がるエース。 もちろん、抱きしめたままのゆいも必然的に立ち上がる。 エースはゆいの右腕を掴み、走り出す。 驚いたゆいは、エースの足の速さに追いつこうと足を動かす。 凄く速い足に、あっという間に体育館までやってきた。 continue... ← | → |