噂の生徒会長 | ナノ

触れてしまった自分の心(7/8)








その時、生徒会室の扉が開いた。



まずい…髪を整えようとしたゆいは、扉の方をみて目を丸めた。



「…ゆい?」



「エー、ス…」



ああ、最悪だ。

なんでよりによって…



生徒会室に入って、ドアを閉めたエースはゆいのすぐ横の椅子に座った。


ゆいは見向きもせずに髪を直す。



「なんかあったのか?」



「…それはこっちの台詞だ。
何か落とし物か?」



ペンを持って、落とし物リストに自分のクラスとエースの名前を記入する。


どうやらエースは彼女と一緒ではないらしい。



エースは、ああ…!と落とし物を机の上に出した。



「財布だ。
中身見てねぇから誰のか知らねぇけどな。」



出された財布の中を見る。

それはバイクの免許証から、先程の生徒だと判明した。


ゆいはリストにエースと男子生徒の名前をリンクさせる。



「…持ち主は数分前に一度ここに来た。もう心配はいらないだろう。」



では、さよなら。

そんなゆいの態度に、エースはさらにドッシリと椅子に構える。



ゆいの顔が歪む。



「…行かないのか?」



「俺はゆいに何かあったかって、聞いたんだけど。」



今朝見た、エースの真面目な顔がすぐそこにある。



嫌だ。

きっとエースのこの顔に自分は弱い。



早く彼女の元に戻ればいいのに。

なんで自分なんかに…



「何もないし、あったとしてもお前には関係ないッ!」



思わず怒鳴るゆい。

怒鳴った後に、湧き出すように後悔がジワジワとゆいを襲う。



エースはそれに怯む事なく、ゆいを見つめる。


早く行けよ、じゃないと…



ゆいの目が徐々に潤んでくる。

震える手は、ペンを机に落とした。



「…早く…行け、よ……っ」



「嫌だ。」



大人しいエースの声がゆいの涙腺を刺激し、頬に涙が伝う。



あの日みたいに、

エースはゆいを抱きしめた。



何で悩んでいるのかは、さっぱり解らなかったけど…

誰にも言ってない辛い過去を、ゆいは自分に話してくれた。



だから何でも話してくれる気がした。


だがゆいはエースの胸板を押し、拒む。





 







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