触れてしまった自分の心 (2/8) そしてやって来た学園祭当日。 朝早くから集められた生徒会役員は当日ならではの仕事をゆいに与えられていた。 そのため、あまりゆいはエースと顔を合わさなかった。 いや、一方的にゆいがエースを避けている様子すら伺えた。 まあそう思っていたのはエースだけで、周りはいつもの冷たいゆいだと思っているが。 エースもゆいは仕事が忙しくてピリピリしているだけだ、と解釈して仕事を進める。 チラッとエースを見る。 だがやはり先日の彼女と一緒にいない。 エースはそういうものなのか…そんな事を考えている自分がいた。 気にしないし、気にもならない…興味ない! のに、まだやっぱり胸が痛くなる。 もうすぐ開会式だ。 生徒会長であるゆいは挨拶をしに体育館へ行かなければならないし、エースも副会長として司会をしなければならない。 つまり、体育館ではエースと必然的に鉢合わせしなければないのだ。 普通に話せる気がしない。 どうしても昨日のことを思い出してしまう。 重い足取りで体育館へ向かう。 「よ、ゆい!」 体育館に入る直前、自分を呼び止める声が…! 誰かがすぐに解り、ゆいは嫌々振り向いた。 「…ああ。」 エースだ。 しかもマルコやサッチ一緒にいない。 嫌なパターンだ。 「そういえば俺、昨日ゆい見かけたんだ。」 「き、昨日!?」 焦った。 まさか、き、キスしているところを覗いたのが… 「歩道橋の上で。」 「歩道橋ぉ!?」 ああ、と笑いながら頷くエース。 なんだ、違うみたいだ。 ドキドキとした胸が静に止んでいく。 「ヤンキー殴って、婆さん助けてただろ。」 「…ああ、あれか。」 「お前、すげー迫力あるな。」 笑い事ではない。 迫力とか、歩道橋とか、今はどうでもいい。 取り合えず、周りの視線が気になる。 彼女は見ていないだろうか。 彼女の友達が、もしかしたら彼女に言ったり… いや、あるいは彼女の家族が… ← | → |