触れてしまった自分の心 (1/8) 見たくないものを見てしまった気分だ。 別にエースの恋愛事情なんて知らないし、気にもならない…はず。 最近は女の子を連れて一緒に歩く姿も減ったし、きっと彼女は恋人なのだろう。 早歩きのせいか、帰りたくない家に早く着いてしまった。 家の前に車がある…と言うことは、父親が帰っている。 家に入りたくない。 そんな思いで、ゆいはお墓に寄ることにした。 彼女がいるのに、どうしてあいつは自分に声をかけるのか。 ―――ゆいは俺の友達だ。 ああ、ほんとだ。 友達だからだろう。 なのに、なんでこんなに苦しいんだろう。 なんでこんなにエースのことばかり気になるんだろう。 誰が彼女であろうとエースの勝手なのに… 誰が彼女であろうと自分には関係ないのに… どうして、こんなに悔しいんだろう。 「…おい婆さん、どけよ。」 突然聞こえた声。 ふ、と横を見れば、大きな道路の向かい側には、何人ものヤンキー達が一人のお年寄りを囲んでいた。 悔しくて溜まった苛々。 そしてヤンキーへの苛々。 「おい、何やってる!」 ゆいはガードレールを飛び越え、反対側の歩道まで走った。 ヤンキーはゆいに白目を向ける。 だが、一瞬で顔付きが変わる。 ニヤニヤしながらゆいを見た。 「姉ちゃん、近くの高校の子じゃねーか。」 「可愛いね、俺達と遊ぼうよ。」 「ざけんな、気持ち悪い。 お婆さんに誤れよ。」 「はあ? 誰に言ってんの?」 会話をしているだけで、結構な苛々が溜まる。 ヤンキーが笑う中、ゆいはヤンキーを1分かからずに倒した。 少しはスッキリしたが、まだモヤモヤする。 お婆さんに目を向ければ、お婆さんは頭を下げた。 「ありがとう、お嬢ちゃん。」 「お婆さん、大丈夫? 怪我してないか?」 「大丈夫だよ。」 ゆいはニコッと笑みを作って、去って行った。 お婆さんはお礼がどったらと言っていたが、ゆいは何も言わずに去った。 それをたまたま、真上の歩道橋で目にしていたエースとマルコとサッチ。 まあゆいは気づいてなさそうだ。 「…生で見れば、あいつって怖ぇな。」 歩道橋の上で笑うエース。 それにマルコとサッチも苦笑いで頷いた。 ← | → |