お前も俺も、有名人(6/6) そんなことを知らないし、これっぽっちも興味もない女子生徒であるゆい。 文化祭前日、生徒会は昨日準備が万全になったので、今日は何もなかった。 そのまま家に帰るのが嫌なゆいは、もう一度準備のチェックをして帰ろうと思った。 生徒会室に入ろうとしたが、不意に聞こえた声に、ゆいは手を止めた。 「エースくん、わたし…」 「?」 『エース』と言う単語に、ゆいは部屋の中を覗いた。 そして、目を見開いた。 入ってはいけない。 この部屋に、今は決して入ってはいけないのだ。 なぜか震える手を引っ込めて、ゆいはその場を走り去った。 女子生徒は突然、エースにキスをした。 離れれば、エースに言った。 「エースくんはおさん、気持ち悪く思わないの?」 「…意味解らねぇ質問だな。」 キスされても、少しも怯まないエース。 これは今までのエースの経験を表していた。 「おさんのこと、好きとか思わないんでしょ? わたしと付き合ってよ。」 「誰が思わないって決め付けたんだ?」 「え…だって、あのおさんだなんて…絶対に有り得ないじゃない。あんなの顔が可愛いだけだし。」 「お前、ゆいの何を知っててそんな事言ってるわけ? 俺はこの学校に来た時からゆいがずっと好きだ。それに誰よりゆいのこと知ってるつもりだ。 だからお前とは付き合わねぇ。 ゆいのこと、嫌いな奴なら尚さらなな。」 そう言って、エースは部屋から出て行った。 女子生徒はエースの出て行った扉の方を見つめ、呟いた。 「…おなんか、死んでしまえばいいのに!」 悔しさのあまり、彼女の目からは涙が零れていた。 continue... ← | → |