お前も俺も、有名人(2/6) 「なあ、そういえば、ゆいはどこにすんの?」 「はあ?」 「大学だ、大学!」 ゆいは顔を引き攣った。 一方的にエースの推薦の話を聞いていたゆいは、間をとって、小さな声でボソッと言った。 「…インペルダウン大学、だ。」 「!…マジかッ!?」 「こんなことを嘘吐いてどうするんだ。」 そう言って、また紐を結び直すゆい。 エースはその横でめちゃくちゃ喜んでいる。 うるさいくらいに。 そんなエースを見て、女の子と喋っていたサッチやマルコは苦笑する。 見た目は馬鹿っぽいのにな、と。 そんなことを知らないエースは、ゆいに満面の笑みで言う。 「俺もインペルダウン大学から推薦来たんだ!来年からよろしくな!」 ゆいの肩をポンポンと叩く。他の奴らにされればキレるゆいも、エースには慣れたのか、比較的静かだ。 そして呆れたようにため息を吐いて言った。 「…あたしはまだ受かってない。」 「ゆいなら受かるだろ、」 「何を根拠に…」 「ゆいが受からなきゃ、学校通う意味ねぇしな。」 「お前…今聞いたんだろ、あたしの志望校。」 「今、俺の意見も変わったんだ!」 「…全く。 ここから向こうまでの紐、全部縛っといてくれ。」 訳がわからないエースに、取りあえず仕事をしてもらおうと指示を出す。 エースは了解!と、高まったテンションを紐へと消費させる。 馬鹿そうなのに… あっと言う間に学年1位の座を奪われてしまった。 成績しか取り柄がない自分を、あいつは全て上回った。 ただ欠席・遅刻・早退を合わせれば、なんとか自分の方が優秀なくらいだ。 来て1日も経たずに、友達も腐るほど作っていて…人が周りに寄ってくるような人間だ。 そんな奴が、さっきみたいに自分にわざわざ話し掛けに来たり、笑い掛けてくれたり。 嫌われ者の自分に、友達だと言ってくれたり。 「…ゆい、紐結んだぞ!」 「ああ、ご苦労。 次は……」 今日も夜遅くまで、作業が続けられた。 途中から自分にベッタリだったエースを見て、面白くなくなったのか女子と一部の男子は姿を消していた。 結局残ったメンバーがゆい、エース、マルコ、サッチ。 これは、いつものメンバーと言っても過言ではないくらいだ。 ← | → |