お前も俺も、有名人(1/6) ―――ゆいは俺の友達だ。 そのエースの言葉が響きながら、体育祭は無事に終わった。 大学入試に向けて、皆が勉強しはじめる時期になった。 だが、生徒会はそうもいかなくて。 再来週に控える学園祭に向けて、また準備の時間が設けられた。 ゆい的には、その時間があってくれて助かっている。 別に勉強は他の生徒に比べたら余裕がある。しかも、家に帰らなくてもいいだなんて、ゆいにとっては救いの手だ。 それに、生徒会には勉強に余裕のある奴がもう一人いる。 「エースくんって、どこの大学にするの?」 「エースくん、頭いいからどこでもいけるよね!」 「エースくんと離れるなんて、嫌だ〜っ!」 ここは体育館。 2週間前から体育館の部活は、学園祭準備のため禁止されている。 そして、その禁止された部活の時間に生徒会が体育館のシートを張ったり、機材のテストをしているのだ。 そんな中、エース、エース、エースって… 女子生徒もうざいが、その本人のエースも相変わらずうざい。 …何を喋ってたって、自分には関係のないこと。 それなのに、どうも何を喋っているのか耳に入って仕方がない。 そして、また苛々が溜まる。 「俺、もうインペルダウン大学の推薦受けてんだ。」 「えーっ!あのインペルダウン大学から!?」 「うそ〜!本当に〜?」 「おう。」 ニカッと女子に笑っているエース。 ゆいは手元が思わず止まる。 なぜなら、 インペルダウン大学は自分の志望校だからだ。 あいつと同じ大学だと!? また変な気分だ。 嫌…でもないけど、嬉しいわけ絶対にない。 「ゆい、括りすぎだろ。」 「は?……あ、しまった!」 誰かに言われ、自分の手元を見た。 そこには、無意識に縛った紐が何度も蝶々結びにされていた。 何をやっているんだ、あたしは! 急いで結び直せば、後ろから笑い声が聞こえる。 「はは、やっぱ面白い奴だな。」 …自分にこんな事言う奴は一人しかいない。 振り返れば、やっぱり笑っているエースの姿。 ← | → |