素直じゃないだけ(6/6) 「それにゆいが何で嫌われ者なんかが、俺には理解できねぇな。」 「………」 「ゆいは頭よくて、スポーツだってできる。喧嘩強くて、さり気なくだけど優しい奴だ。」 …でも。 何ができようと。 わたしがどんなに勉強して、 いい記録を残して、 喧嘩して、 優しく接したつもりでも… どうわたしが思っても、 現実はうまくいかない。 「…あたしが誰より頑張っても、誰もあたしを認めない。 嫌われ者としか思ってない。 人すら寄って来ないのに……お前は…っ」 震えた声と共に、ゆいは両手で潤んだ目を隠す。 エースはそんなゆいを胸に押し当てる。 そして、頭を撫でた。 「…あたしに、なんで…っ」 「ゆいがいい奴だって、俺は最初っから思ってたからな。 素直じゃねぇだけ。」 「エース……っ」 「!」 ドキッとした。 多分、ゆいに初めて名前で呼ばれた。 しかも、このシチュエーションで。 ああ、こんなに好きなんだな、俺はゆいが。 すごくゆいに近付けた気分だ…いや、近付けた。 「友達ならいる。 ゆいは俺の友達だ。」 これでいつか、ゆいが俺に恋をしてくれることを待つだけだ。 3諭吉は欲しいけど、 今、ゆいが泣いたのは 2人だけの秘密ってことで。 continue... ← | → |