素直じゃないだけ(5/6) 「いや、マジで。 ゆいは何だかんだ言って、俺の面倒ちゃんと見てくれてんだろ?」 「お、お前の面倒など誰もみた覚えはない。」 「俺との会話、最近続けてくれるようになったじゃねーかよ。」 「そ、それは…」 言葉に詰まるゆい。 実際、何でこいつと会話しているのかが自分でもよく解っていない。 視線が落ちるゆいの瞳。 人一倍大きな瞳に、人一倍綺麗で整った顔。 言葉の出ないゆいに、先に口を開くエース。 「俺もな、両親いないんだ。」 パッと落ちた視線を上げるゆい。 先ほど自分は親が心配しないのか、と聞いてしまったのに。 だが、エースは気にせず話を続ける。 「まあ俺は物心ついた時から、知り合いのじいさんに育てられてたんだけどな。 そのじいさんの孫が、今の俺の弟なんだ。 だから本当は血は繋がってない。でも、俺はすげー大事な弟だと思ってる。」 「…そうか。」 嬉しそうに話すエース。 確かに、一方的には弟がいる事を聞いていた。 エースは自分の持っていた花を置いて、ゆいに言った。 「これが俺の人生だ。 ゆいの家の事はマルコから大体聞いた。けど、もっと俺はお前の事知りてぇ。」 目を見開くゆい。 自分の事を、知りたい…? 今までのことを、人に話せと? 自分の今の状態を、今まで誰にも話さなかったし、誰も聞いてこなかったことを…? 「マルコはどこまで言ったんだ…?」 どうしてか… こいつになら言ってもいい気がした。 大丈夫…、 いや、わたしはこいつに聞いてほしいのか… 「お前が母ちゃん亡くして、父親が女連れて帰るようになった事くらいだ。」 「…そうか。 8歳の時にわたしは大好きだった母親を亡くした。 父親と二人で暮らしてから、父親は急に女癖が悪くなったんだ。そんな父親が憎らしく思えた。家に帰れば毎回違う女がいて…だから家は嫌いなんだ。帰りたくない…そう思い始めてた。 部活をすれば帰りは遅くなっていいと思った。けど、嫌われ者のあたしが部活の輪に入れる訳がないだろ…。だから部活に入るのはやめた。 最初は仕方なく生徒会に入った。 だが、してるうちにわたしの居場所になった。 わたしは無理矢理 生徒会に居場所を作ったんだ。一人でいれる場所を。」 ふっと寂し気に笑うゆい。 本当にマルコの言っていた通り、ずっと一人だったらしい。 「本当はな、母親を亡くしてからなんだ…こんな変な性格になったのも。」 「変なんかじゃねぇよ。」 「!」 えっ、とエースを見るゆい。 エースは笑って言った。 「個性的っていうんだよ、そういうのを。」 「意味として変わらないだろ。」 眉を微かに額に集めるゆい。エースは笑った顔を優しい顔に変える。 ← | → |