素直じゃないだけ(4/6) 「…親が心配するんじゃないのか。」 「もうんな歳じゃねぇよ。」 「そうか…。」 ゆいの無表情からは、心なしか悲しい気持ちが読み取れた。 だが黙って作業するゆい。 家族という話題は、きっと彼女をいつまでも苦しめ続けるのだ。 ゆいの手元の花があっという間に完成する。 それを透明のごみ袋の中に入れて、また新しい布紙で花を作る。 が、ゆいは最初の1つだけの動作をすれば、手を止めた。 エースは不思議そうにゆいを見た。 「…教えてやるから、はやく折れ。次に進めない。」 「お、おう!」 ゆいの折った通り、エースも折る。 エースに無言で真似させるゆい。だが、その動きは解りやすく、ゆっくりと花の形を整えていった。 中々の不意打ちをゆいに食らったエースは、その記憶力故に何とか1度の説明で覚えてみせた。 鉛筆を転がすのがエースの実力ではないことを、改めて知ったゆい。 「いつから一人でやってるんだ?」 花を次は一人で作るエース。 ゆいは考え、花をごみ袋の中へ入れれば言った。 「…1時間以上前からだ。」 「1時間以上前って、まだ部活の奴らですら帰ってねぇ時間じゃ…」 「帰らせたんだ。 喧しくて仕事をしない女子ばかりでな。」 ああ、ゆいの愚痴を言っていた奴らか。 確かにギャルとは言えないが、派手な奴らで仕事しそうにないな。 「で、何で男子もいないんだ?」 「やる気のない奴は帰れ、て言ったから。マルコとサッチは30分ぐらい付き合うと言ってくれたがな。今日は無しにするって言った。」 「んで、マルコもサッチも帰ったのか。」 「ああ。」 いい奴じゃんか、あいつら。 エースは密かに2人に思った。 ゆいの事、難しいとか止めとけとか言うから、てっきりあんまり好きじゃないのかと思ってた。 まあサッチも、マルコから昨日の話を聞いて変わったのかもしれねぇけど。 「お前も大変だな。」 そう言って、ニッと笑うエース。 ゆいは手を止めて、エースを見た。 この生徒会室に入って、初めてエースの方を見たゆいは言った。 「…お前はどうしてあたしなんかに構うんだ?」 怒っているわけではなく、 だからと言って、冗談げではないゆいの言葉。 ずっと気になってた。 そう言っている気がした。 すごく悲しそうな表情。 初めて怒る以外にちゃんと見せた、ゆいの表情…… 「何でかなあ…?」 「ふざけているなら、怒るぞ。」 キッと睨むゆい。 苦笑しながらエースは言う。 ← | → |