素直じゃないだけ(2/6) だが、持っているクッキーは取り上げられる。 「…んだよ、欲しいのか?」 「そうだ、欲しいんだ。」 いや、正直い言ったらクッキー貰えるとかないから。 つか何ちゃっかり食ってんだよ、このおっさん。 目の前に突然現れた赤髪教師、シャンクスに苦笑するエース。 「暇そうだな!」 「…暇じゃねぇし。」 バクバクと食われていくクッキーを横目で見るエース。 また明日も貰えるからいいか。と取り返すのを止める。 「そうか、そんなに先生の手伝いしたいのか…仕方ない!」 「言ってねぇよッ!」 「よし、じゃあ行くぞ。」 「何処にだよ。」 「職員室に決まってるだろ。 数学満点のエースに、先生は再テストの丸付けを頼みたい。」 ニッと笑うシャンクス。 いや、笑ってる場合じゃねぇだろ。 生徒に丸付け頼む教師がどこにいるんだよ。 行く気は無かったが、シャンクスにそのあと強く頼まれ、2000円で取り引きを成立させたエース。 完全に奴は教師クビだ。 見つかれば、だけどな。 ゆいに怒られるな。 俺が副会長クビになったらどうしようか。 まあシャンクスの手伝いって言えば、大方許してくれそうだが。 シャンクスに連れていかれるエース。 実はその姿をゆいは窓から見ていた。 「…まあいいか。 うるさい奴が一人減るだけだ。」 ため息を吐いたゆい。 休憩をやれば、少し大人しくなると思ったが。 それと同時に仕事の人手まで減ってしまった。 女子は喋るだけで、何もしないし。 埃がたつだの、汚いのに触りたくないだの、服が汚れるだの、蜘蛛の巣が気持ち悪い〜だの……文句たらたらだ。 いるだけで目障りな奴らだ。 ゆいは手を休めずに、用具の記入をするが… 何でだろう。 廊下にいる時は気にならなかったのに。 ふと、廊下を見た。 先ほどまでシャンクスと話していたエースはいない。 なんであいつのことを、気にかけなければならない。 なんでこんなに、あいつがいないだけで世界が暗く見えるんだ? 変な感じだ。 あいつが来てから、変な感じになる事が多い。 嫌な奴だ。 まるで何かに取り付かれた気分。 目障りだとは思う。 話し掛けられるのも、怠いと思う。 何より馬鹿そうなのに、自分と2点もテストで差をつけられているのが気に食わない。 普段の自分なら、苛々して殴っているだろうに。 無視して、しつこかったら怒鳴っていただろうに。 どうしてあいつには、そうしないんだ? 苛々して帰った日は、いつも以上に寂しく思う。 今更なのに。 ずっと一人で何でもしてきたはずなのに。 またため息が零れる。 ああ、考えるだけでまた苛々してきた。 ← | → |