噂の生徒会長 | ナノ

素直じゃないだけ(1/6)








「って事で、2週間後の体育祭の準備を始める。」



生徒会室。
普通の教室と広さは一緒だが、段ボールや棚等で広く感じられなかった。

初めて入る生徒会室に、エースは騒ぐがマルコに殴られて止まる。



ゆいが配る各種目の使用用具や配置が書かれた紙を皆が受け取る。



昨日の今日で、エースは控えめな態度でゆいを怒らせない様に努力する。


だが、気づけばゆいに絡んでいる自分がいる。



「なあゆい、休憩にしね?」



「…20分前にもとっただろ。」



「20分も俺の腹は頑張ったんだ!」



「お前の腹の事情など知らん。
それよりあれ、なんとかしろ。」



そう言って、ゆいは窓の外を指差した。

しかも、今日見た中で1番嫌そうな顔をしながら。


エースは思わず苦笑する。

へいへい、何とかしたら休憩な!と一方的に約束する。



そう、窓で生徒会を覗く女子達を何とかしたら…



「お前ら、明日も俺は学校来るから、そん時来いよ。」



弟の話しを聞かせてやるよ!
と嬉しそうに親指を立てるエース。

お前が話したいだけだろ、と内心呟くサッチ。


だが女子は、そんなエースの話を素直に受け止めて去っていく。

多分こいつは、こういう事態に慣れているのだと思う。


帰ってきたエースの口には、大量のクッキーが詰め込まれていた。


それをチラッと見たゆいは、眉間に皺を寄せながらエースに言う。



「…生徒会室は打ち上げ時以外の飲食を禁じられている。
口のものが無くなってから出直して来い。」



くそ真面目な奴だ。
誰もがそう思ったが、エースは頷き手を振って出て行った。


ゆいはそれを横目で見ながら作業を進める。


面倒臭いことを言われたにも関わらず、舌打ち一つせずにヘラヘラとしているエース。


一方、エースが生徒会に入って喜んでいた生徒会女子メンバーはゆいを愚痴っている。



ゆいの耳にだって、女子の声は届いているはずだ。


だけどゆいは表情を変えずにリストを見ながらポールの数を数えている。











一方のエースはクッキーを廊下でモグモグと食べていた。

もちろん、女子がゆいの愚痴を言っているのが聞こえるくらい生徒会室に近い所で。



クッキーと一緒に入っている手紙は読まず、今日貰ったいくつかのクッキーをひたすら食べる。


エースは、ふと思った。



「…俺、休憩してんじゃね?」



ゆいからの気遣いか、これは?


いつものゆいならきっと、出直して来い、ではなく、今すぐ吐き出せ、だ。


考えてみると、心が躍る。

昨日ゆいに大嫌いって言われたばかりなのに。



みんな知らないだけで、やっぱりゆいはいい奴なんだよ。

一人、ニヤニヤするエース。



「なんだエース、そのクッキーは。没収するぞ。」



どこからともなく聞こえて来る嫌な声。

気にせず口にクッキーを運ぶエース。




 









|






人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -