大っ嫌い、単純に。(6/6) 「なんでマルコがゆいの家の事、知ってんだ?」 「そうだぞ! 3年間同じクラスの俺ですら、ゆいに関しては謎が多いのによ!」 「いや、俺ん家、ゆいの家の向かいだからなぃ。」 サラリと口にするマルコ。 嘘だろ!とサッチが言う。 マルコの顔は本気っぽいが。 「マルコん家の向かいって、結構でけぇ家じゃなかったっけ?」 「マジかよ!」 頷くマルコに、ゆいのマンションに住んでいるイメージが崩れた。 そんな事はどうでもいい。 つか、寧ろ今思えば一軒家っぽいな、ゆい。 「んで、ゆいん家はどう難しいんだよ?」 サッチの言葉に、マルコは答える。 「あいつ、母親いねぇんだよぃ。」 「「!」」 マルコの言葉に、さっきでは考えられないくらいシリアスな空気が流れた。 「1番俺らが母親の事、必要だった時期にゆいは事故で母親亡くしてんだよい。」 「嘘だろ…」 ゆいの印象が段々変わっていくエース。 最初は可愛いから話しかけた。 今はあいつといて楽しいから、話し掛ける。 なにか自分のしていた事が悪く思えてきた気がした。 「…父親はその時はまだいい人だったらしいよい。 今じゃ家に色んな女、連れ込んでるのをよく見るけどよい。 母親が死んで、父親に愛されなかったんだろうな。」 「…!」 エースはふと、頭に過ぎった。 『お前みたいに…授業中寝てて…体育だけ起きてて真面目にやって…その癖に頭が良くて…女子に愛想ぶって…早弁して…毎日違う女と歩いて…ああ、苛々する!大嫌いなんだ!』 そりゃ、嫌いだろうな。 女子に愛想ぶって… 毎日違う女と歩いて… 父親重ねたんなら、嫌じゃない訳ないよな。 ゆいが来てほしいなら、行こっかなあ?なんて …色んな女に使ってきた言葉だ。 他の女とゆいの使い方が違う訳じゃない。 ゆいはそういう考えの男が嫌いだったんだ。 残った父親に愛されなかった。 なんか自分が泣けてきた。 continue... ← | → |