大っ嫌い、単純に。(4/6) 「…わたしはな、お前みたいな奴が大っ嫌いだ!」 今にも泣きそうなゆいの声。 俯いた顔。 でも何故かエースにはわかるゆいの表情。 相当悔しいんだな。 可愛い奴だ、と思う。 「お前みたいに…授業中寝てて…体育だけ起きてて真面目にやって…その癖に頭が良くて…女子に愛想ぶって…早弁して…毎日違う女と歩いて…ああ、苛々する!大嫌いなんだ!」 ゆいは自分の長い茶色の髪の毛をくしゃくしゃと掻く。 茶色いが、ゆいの性格上この髪が自毛であることが分かる。 つか女って関係なくね? ちゃんと自分の事を見ているゆいに、フッと笑みが零れる。 こいつは相当奥手のツンデレだ、絶対に。 サッチの3諭吉は貰ったと思った瞬間だった。 「そうか。 俺はお前の事、嫌いじゃないけどな?」 「…! ……わ、わたしは嫌いだッ!」 決して照れてはないゆいの表情。 ここで照れていてくれたら、1番可愛いのに…ゆいは本気で言っているっぽい。 ゆいの机に頬杖をつき、ゆいを見ているエース。 そんなエースを見ることなく、ゆいは言った。 「だ、だがな…明日は生徒会だ。 …お前は副会長だから来なければクビだッ!」 非常に真面目なゆいに、笑いたくなるエース。 何でこんなに可愛いんだろ。 まだツンしか見てないのに、もうゆいに夢中な自分がいる。 あーあ、サッチに報告だ。 絶対にサッチの野郎、賭けた諭吉の人数減らすぞ? まだエースを見ようとしないゆい。 それを逆手にとって、ゆいをガン見するエース。 「なあゆい?」 「なんだ…」 「もし俺、クビになったらどーなんの?」 「!…お前、来ないつもりか!?」 ゆいの顔が歪む。 嫌いって言っときながら、来ないのは嫌なのかよ。 …これはツンデレって言えるのか? でも、ゆいはプライベートで俺が嫌いであって、今のは生徒会長として副会長を呼んでるだけだろうが。 んー、やっぱり3諭吉までの道は長そうだ。 「ゆいが来てほしいなら、行こっかなあ?」 そんな事を言うエース。 ゆいの顔は益々歪む。 ああ、そう言えば、こいつは普通の女じゃなかった。 普通の女なら、もう!とか言って腕にぎゅって絡み付くのが普通だ。 そんな事、ゆいがしたら鼻からの出欠多量で確実に死ぬな。 ← | → |