大っ嫌い、単純に。(2/6) 母親が亡くなってからというもの、父親の女癖が非常に悪くなった。 そんな父親がとても嫌いだった。 母さんがいた頃は、家族を優先して早く帰ってくる様な父親だったのに。 今では見る影もない。 だから家に帰るのは嫌だった。 朝早くに学校に行くのも、そして、学校から帰るのは基本遅いのも、そのためだ。 誰とも会話しない1週間なんて、当たり前のようにあった。 それが今はどうだろう。 「ポートガス・D・エース…」 部屋に鞄を下ろし、呟いた。 彼は毎日の様に自分に絡む。 別に性格が捻くれている訳でもないし、嫌われ者でもない。 謎が多い男だ。 こいつのお陰で、12回目となる今読んでいる本が、なかなか進まない。 そしつゆいの口からは、ため息が零れた。 テストの順位が張り出される今日。 ゆいはいつもは通り過ぎる廊下で、目を見開いていた。 なぜなら… 「2位…だと、」 惜しくも合計点数2点差で、2位に転落していた。 500満点中、496点のゆい。 ゆいの下は相変わらず50点以上の差がある。 だが、ゆいの上には498点の文字が… 廊下に次々と群がる生徒達も、自分の順位よりそちらを見て驚く。 「おい、転入生の武勇伝がまた一つ増えたぞッ!」 叫び回る男子生徒。 そう、ゆいの順位を2点差で抜いた奴は… 「よお、ゆい。 お前朝早いな。」 「…ポートガス・D・エースッ!」 「な、なんだ?」 軽く欠伸をしながらゆいに話しかけたエース。 そして彼をキッと睨みながら、1番上の名前を指差したゆい。 エースは訳がわからないまま、ゆいの指の先を見た。 「おお、俺あと2点で満点!」 「その2点じゃないッ!」 ゆいは悔しそうな目をエースに向けて、その場を走って去って行った。 走り方可愛いな、おい。 そんな事、死んでも言えないエース。 ← | → |