大っ嫌い、単純に。(1/6) エースが転入生して来てからだいぶ経った。 奴は相変わらず一方的にゆいに話題を振りつづけている。 何だか、変な気分だ。 今まで誰とも一緒にいなかったし、誰も自分に話しかけたりはしなかった。 それで良かった。 別に不便さも感じなかったし、寧ろ隣に居られるのが面倒だった。 なのに奴は何で…? テスト最終日の午後、ゆいは近くの花屋に寄った。 花を買い、少し離れた墓地まであるいた。 お家の墓だ。 花はまだ新しいままだが、その花を捨てて自分が買った花を供える。 そこに眠っているのは、紛れもなく自分の母親だ。 大好きだった母親は、自分が8歳の時に交通事故で亡くなった。 それ以来、ゆいは時間ができれば週1で墓に花を供えに来ている。 そのため、線香とライターは鞄の中に常に入っている状態だ。 線香に火を点ければ、それを立てる。 手を合わせ、目を閉じる。 母さん、変な転入生が来た。 本当に変な奴なんだ。 こんなわたしに、話し掛けて来る奴なんだ。 それにわたしの拳を、奴は初日に止めたんだ。 そいつはな、副会長になるって言ったんだ。 正直、驚いたけど 長引かないで嬉しかった。 瞳を開き、下ろした鞄を拾う。 そしと柔らかい表情で墓を後にする。 家へ帰れば、玄関には女性用のハイヒール。 しかもドピンクの。 きっと父親が女を連れて来たんだ。 そんな事、今更驚くゆいではなかった。 そう、これは今に始まったことではない。 比較的裕福な家に生まれた自分。 父親も会社の中では上の方の人材だ。 だから、女なんて金で釣ればゴロゴロと現れる。 毎回違う顔の女。 わざわざ自分にまで愛想よく振る舞う。 別にわたしに気に入られても、金はあんたに入ってこないのに。 ← | → |