恋してごめんなさい、(4/8) 部屋には既にニコニコしたお嬢様が座っていた。 長いテーブルの上に乗せられた、綺麗に飾り付けられた料理。 サッチは相変わらず器用だと思う。 そして、女の横に座るおっさんとおばさん。 この女の親だろう。 一度、挨拶のために頭を下げれば、座る3人は嬉しそうにお辞儀した。 その時にされた、元秘書野郎と女の親父とのアイコンタクトに、エースは気づいてない。 女の前に座れば、元秘書野郎は言う。 「ご夫妻、そしてお嬢様。 遠路遥々からお越しいただき、お疲れになられたでしょう。 どうぞ、遠慮せずに召し上がって下さい。」 「ああ、悪いですなあ。」 サッチの作った料理を口にする石油会社社長家族。 略して石油家族。 どうやらご満悦。 「おお! こんな料理を、毎日娘に食わせるなら安心だ!」 「腕の立つシェフだこと。」 おほほほほ、と笑う婦人。 いや、誰もお宅のお嬢さんを欲しいだなんて言ってないぞ。 お嬢さんはお嬢さんで、こちらをチラチラ見てる。 「エース様は、何をされるのがお得意なのですか?」 可愛らしい声で固い言葉。 やはり、金持ちのお嬢様だ。 ゆいみたいなタイプを知った自分には、苦手な部類だ。 「俺は食うのが好きだな。」 全く固くない言葉。 ロジャーの息子はこれで許される。 まあ他の貴族との格の違いって奴だ。 それを聞いた女は、父親に向かって言った。 「わたくし、明日からお料理を習いたいですわ、お父様。」 まさかの展開。 いや、わざわざいいから。 会話を聞いていた父親は、うむ いいぞ。と頷く。 よくねぇよ。 「わたくしは、バイオリンを弾くのが得意なのですわ。」 ああ、そう。 でも聞いてねぇよ、何が得意か。 つか興味ねぇ。 ゆいならバイト先の先輩を怒らせるのが得意、とか面白い事言うのに。 つまらない会話を適当に合わせるエース。 それを仲良くしていると見た石油社長は、大胆に繰り出した。 「ところでエース君、式はいつ挙げようか。」 し、式…!? 結婚式のことか? しねぇよ、んなもん。 やだ、お父様っと頬を両手で覆う女。 こっちが色んな意味で嫌だってんだ。 ペラペラとスケジュール帳をめくる元秘書。 そして、ん〜と悩む。 俺の引きこもり生活に、スケジュールは一コも入ってないはずだが。 ← | → |