何もいらないから自由を下さい(7/7) 「明日だ。」 「急な話だない、」 「ああ、でも明日がいいんだ。」 記念日な訳でもないし、特別な日でもない。 だが、いくつか理由はあった。 ゆいのバイトのシフトが入っていない日だから。 それと毎日メールするのが、とても胸が痛むから。 そして、少しでも引き延ばして悲しみを増やすのは嫌だから。 「ゆいには言ったんだ。 だから…明日の10時に、たのむな…っ。」 段々弱くなるエースの声。 まるで今にでも目から涙が落ちて来そうだ。 それだけエースはゆいに惚れているのだ。 エースが女関係で悩む事は、これまで一度もなかった。 エースは女を悩ませる奴だったからだ。 でも、今回はゆいの為にたくさん悩んだのだろう。 ゆいの事を1番に考えるなら、正しい選択をしたと思う。 金持ちは何に手を出すか解ったものではないから。 "好き故の別れ"という意味に、正しい決断をしたエースは、大人になった。 悲しい程に、世界が暗く見えただろう。 マルコは頷いたら、その場をそそくさと離れた。 すれ違い際、エースの顔をあえて見なかった。 廊下の明るいライトが、彼の頬を光らせていたのを知っていたから。 continue... ← | → |