何もいらないから自由を下さい(5/7) その日の夜のことだった。 ルフィはいつも早めに寝るため、暇をしている。 いつもの様にゆいとメールをしていれば、部屋のドアがノックされる。 嫌な感じがした。 出るな、直感で足がそう言った。 しかし出ないのも悪いので、部屋の扉を開けた。 目の前には、やはり嫌な奴が立っていた。 「…なんだよ。」 「少々お話があるのですが。」 「…入れ。」 1番来てほしくはなかった元秘書野郎を、部屋の中に入れる。 苛立った態度でソファーに座る。 元秘書野郎は立ったままだった。 「…昨日クビにした3人を、また元に戻そうと思いまして。」 「はあ?」 何を言っているんだ? 戻すって、何を企んでやがる。 まあ大体検討はつくが。 「その代わり、ゆいさんとは縁を切ってください。」 「無理だ。」 「エース様には見合いの話をお父様から持ち掛けられております。」 み、見合いだと!? ふざけやがって。 どうせ金持ちのお嬢様な女だろう。 絶対に嫌だ。 「…断れ。」 「お父様直々に持ち出された話なので、できません。 それに、あなたにはいい条件ではないですか。」 「どこがだよ。 俺の人生を何だと思ってやがる。」 「…あなたは、ルフィ様に大変な迷惑を掛けておられるのをご承知の上で、その様な事を申されておられるのですか? それに、あのクビになった3人だって、あなたの我が儘の為にこの屋敷を追い出された。 責任を感じてはいないのですか?」 冷たい視線。 感じてない訳がない。 だけど、辞めさせたのはお前だ。 「それに1番辛いのは、貴方ではなくゆいさんの方ですよ? あの方も馬鹿ではないので、気付いている筈です。 このままエース様と一緒にいるのは不可能であることを。 そうやってエース様に愛されて、そして結局突き放される運命を歩ませるのは貴方です。」 「黙れ。 突き放したりしねぇ!」 「お父様に逆らえば、ゆいさんやその回りまで潰されますよ。」 「黙れッ。」 「ゆいさんを1番想っているのなら、別れを考えるべきです。」 「黙れッ!」 「"好き故の別れ"って意味がわかりますか?」 「……ッ!」 「ゆいさんに手を出した貴方ができる後片付けは、切ることしかできませんよ。 ゆいさんに辛い思いをさせたくないと思うなら。 エース様とゆいさんは、住む世界が合わなかった。 …ただそれだけですよ。」 失礼しました、と退出する元秘書。 エースは頭を抱えた。 ← | → |