何もいらないから自由を下さい(3/7) 「彼等は悪い事をしましたよ、それも極悪非道な事を…」 上司であるわたしに、業務上での隠し事をしていたのですから。 そう付け足す元秘書。 やはりゆいの事だ。 「だから何だってんだ!? 業務上だか何だか知んねぇけど、こんな不味い飯毎日食わせるんだったら、親父に言うぞ!」 「ならコックを変えましょう。 それで文句はないでしょう?」 「嫌だ! 俺はサッチの作った飯しか食いたくねぇ!みんなを戻せ!」 ルフィの声が部屋に響く。 こんなに怒ったルフィを、初めて見たくらいだ。 それなのに元秘書野郎は、何も変更するつもりはないらしい。 やれやれ、と面倒臭そうにルフィを見て言った。 「解らない人ですね。 お気づきでしょう?貴方方のお父様から、貴方方の責任者としとわたしは雇われているのですよ? …もはやわたしがこの屋敷の主同然。 貴方方が何と言おうが、わたしが決定権を握っているのです。 お分かり頂けましたか?」 冷たい目を閉じて、余裕の笑みを見せる元秘書。 「だいたい、あんな小汚い女などお父様がお許しする訳がない。」 小汚い女…? エースの頭の線がブチッと音を立てながらキレる。 テーブルの上を跳び、元秘書の胸倉を掴んだ。 そして、静かな声で言った。 「…誰のことだ、それ。」 「胸倉まで掴んでおいて、そのような質問をなさるのですか? お分かりでしょう?」 「てめぇ…っ」 拳を上げるエースに、元秘書は言う。 「ゆいという人間を、少々調べさせて頂きました。 住所、年齢、電話番号、バイト先、学歴、家柄、身長に血液型…その他諸々。 どうですか、わたしを殴れますか?」 目を丸めて拳を動かせないエース。 やられた。 こいつは次に、ゆいに手を掛けるつもりだ。 押し出す様に胸倉を離せば、テーブルを蹴って出ていくエース。 長いテーブルは、その振動に耐え切れずにひっくり返る。 ルフィも、エースの後を追うように部屋から出て行った。 元秘書は乱したネクタイを整えながら、ボソッと呟く。 「…ゴミ兄弟が。 大人しくしていればいいものの…」 ← | → |