何もいらないから自由を下さい(1/7) あれから幾度かゆいは家にくるようになった。 もちろん、元秘書野郎の目を盗みながらだが。 俺達は大きな一歩を踏んだと思う。 だから、また大きく一歩前に進みたいと思っていた。 ゆいを元秘書野郎には黙って親に紹介しようと思っていた。 よく考えれば、何かと自分の家柄の話とか、父親が許さない、だとか元秘書野郎は言う。 だが実際、ここ何年も会っていない親が、本当にそんな事を思っているのだろうか。 親の連絡先はある。 だがここ数日、掛けるかどうかを迷っていた。 そんなある水曜日の事だった。 朝、今日はナミが今頃ルフィを起こしている筈… だが、朝食5分前であるいつもの時間に、ルフィはやって来ない。 そして、朝食の時間が過ぎた。 ナミが起こさないだなんて、珍しい。 今日は休みか? そんな事を思いながら、エースはルフィの部屋に行った。 ノックをしたが、返事がない。 一声かけて部屋に入れば、ベッドの下で寝ているルフィ。 まあ寝相が悪いのはいつものことだ。 ルフィを起こして、とりあえず食事を食べに行く。 既に並んだご馳走に、ズラッといつもの様に並んだメイド達。 だが、何か違和感を感じた。 おはようございます、と元秘書野郎が顔を出した。 相変わらず好きになれない顔だ。 ああ、と返事をして、料理に手を付けた。 だが、目の前のルフィを見て、その手を動かすのを止めた。 先に料理に手を付けたルフィの手が止まったからだ。 食事大好きなルフィが、なぜか真剣な顔をしていたからだ。 「…どうした、ルフィ?」 「これ、違うんだ…エース、」 「?」 料理を見てルフィは言った。 何が?と言えば、珍しく低い声が聞こえる。 ← | → |