5分・・・いや5秒でいい、(2/6) 「エース!」 車を降りて、少し辺りを見回せば、自分を呼ぶ声。 振り返れば、小走りでこちらへ来る姿が。 「よお、ゆい。」 「久しぶりだね。」 少し息を切らしているゆい。 なぜか、まるで昨日も逢ったかのような感覚になる。 あんなにゆいに会えない時間が長く感じたのになあ、 「今日も秘書さん、用事なの?」 「いや、あの野郎は高熱で寝込んでるらしいぜ?」 「そうなんだ… 可哀相だけど、寝込んでくれて嬉しいね。」 「そうだな、まあ可哀相もクソもねぇけどな。」 「酷いなぁ、」 「あの野郎がな。」 嫌いだね、と笑うゆい。 そこからエースは溜めていた元秘書の愚痴をゆいに零しはじめる。 ゆいは笑いながら相槌を丁寧に打ち、聞いてくれた。 そんな些細な事でも、エースは出会った中で1番いい女だと思う。 彼氏がいないなんて、信じられないくらい。 「そういえば、ゆいはあれから彼氏できたのか?」 「う……っ」 できてないらしい。 ユニークなリアクションに、思わず吹き出す。 返事が少し怖いと思ったエースだが、案外ゆいは慎重なタイプらしい。 「、エースはどうなの?」 「俺は、まあパーティーなかったからメイドとしか女と接触なくてよ。」 「言い訳じゃん!」 「悪いか!?」 確かに言い訳だ。 パーティーに出たら、本当に女はすぐに寄って来るんだぞ? そう言いたくなるが、ゆいにやましい印象を付けたくないので言葉を飲む。 「エースは格好いいのに、勿体ないね。」 さりげなくゆいの言葉が耳に入る。 いや、自分の耳が勝手に反応しただけだ。 「そういうゆいも、何で男つくらないんだ?」 そう聞けば、難しそうな顔をするゆい。 なにかまずい事を言ってしまったのか、と後悔するエース。 「わたしね、我が儘なの。」 「?」 ← | → |