老朽化には勝てません。(6/7) 「…な、なんで!?」 両手は解放された。 だが、左手の海楼石だけ見事に外れない。 これでは能力が使えないままだ。 意味がわからない。 他に鍵穴はなく、他の同じ番号の彫ってある鍵もない。 ますます火拳のエースを探さなければならなくなった。 「…他の奴らに見つかる前に探さなきゃ!」 ゆいは急いで牢屋を見て回る。 案外、入っていない牢屋が多かったので助かる。 ある一つの牢屋の前でゆいは立ち止まった。 なぜかは解らないが、すごくそこに惹かれたからだ。 ここに火拳のエースがいる気がする。 牢屋の番号を確かめ、牢屋の中を覗く。 「…!」 確かにいた。 きっとあれが火拳のエースだ。 眠っているのだろうか、びくともしないエース。 牢屋の鍵を慌てて探す。 「…これだ。」 鍵穴に差し半回転させれば、牢屋はキイッと音を立てながら開いた。 火拳のエースはまだぐったりしたままだ。 こちらを見向きもしない。 まさかもう死んでいるのか、と火拳のエースをずっと見ていれば、低い声が牢屋に響いた。 「誰だ。」 ビクッとなった。 何も読み取れない火拳のエースの表情に、ゆいの顔も真面目になった。 「わたしはゆい。 脱獄常習犯のね。」 エースの顔がゆっくり驚いた表情でこちらを向いた。 そんなエースに微笑みかける。 「…火拳のエースの鍵、わたしが持ってるの。 今わたしが火拳のエースの手錠を外したら、火拳のエースはわたしを近くの街まで無事に逃がしてくれる?」 鍵をエースの前に出す。 本物だよ、と。 エースはその鍵を見て、フッと笑った。 ← | → |