老朽化には勝てません。(5/7) 石一つ分で、ぎりぎりゆいの身体が入るくらいだった。 だが、もう一つ分くらい横の牢屋に行くには石がある。 「…しょうがない。」 ゆいは地味に石を削り始めた。 だが石も案外脆いもので、1週間で隣の牢屋までたどり着いた。 なんて地味な脱獄犯なんだ、と我ながら苦笑する。 そうでもしなければ、インペルダウンは抜けられない。 狭い石の隙間を抜ければ、運よく隣の牢屋は空だった。 故に個別の牢屋と内部へ続く扉は無防備に開いていた。 「なかなかついてるな、」 苦労した甲斐があった。 両手以外は解放されたものだ。 あとは見張り番に遭って、鍵を奪うだけ。 だがあっという間に1ヶ月は過ぎた。 火拳のエースはまだインペルダウンにいるだろうか? 同じ無限地獄にいると聞いたが… 火拳のエースと見張り番、どちらを先に探すかだ。 火拳のエースを探していれば、きっと見張り番が現れるだろう…と思い、牢屋を1つずつ見ることにした。 小さな除き穴から、見る。 火拳のエースらしき人はいない。 ん〜、と背伸びして牢屋を覗けば、運よく見張り番が現れた。 「貴様、ここで何をしている!」 「お、おい、こいつは脱獄のゆいだぞ!」 「なんだと!? 無限地獄を抜けたのか?」 ニコッと自慢げに笑うゆいに、容赦なく斬り掛かる見張り番。 「こいつはまだ海楼石の手錠を付けたままだ!能力は使えない!」 攻撃を軽く交わすゆい。 両手が塞がっているため、身体は思い通りにいかない中、見張り番の顎を蹴り上げた。 綺麗にきまり、自分でも感動する。 「思ったより鈍ってないみたい。」 蹴られた見張り番の持っていた剣が宙を舞う。 その剣を両手で掴み、もう一人に斬り掛かった。 能力がなくても、これくらいなら何とかなる。 「…さて、わたしの鍵は〜」 見張り番の服に掛かった鍵をとる。 自分の牢屋の番号の鍵で、手錠を開ける。 チャリン…と鎖が下に落ちた音がするが… ← | → |