歴史上最高の脱獄劇(5/8) 聞き覚えのある声… ゆいは固く閉じた目を開いた。 首は繋がっている。 その変わり、頭にげんこつが降ってきた。 「いた…っ」 何でだろう。 げんこつが痛いのかな…? 涙でげんこつした野郎の顔が見えない。 顔なんて、見なくたっても解るけど… 「馬鹿ゆい…心配かけやがって。」 「えー、す…っ」 ぎゅっと抱きしめられる。 牢屋の冷たいレンガの床や壁、弱って体温が上がらないゆいの身体に、凄く暖かい温もりを感じる。 やっぱり思い残したものは、まだいっぱいあるみたいだ。 「よかった…ちゃんと生きててくれてッ!」 「うん、生きてるよ…っ!」 強く抱きしめている腕に、すこし苦しさを感じる。 だが、今はこれくらいがちょうどいい。 ずっとずっと、こうしていたいのは山々だが、やはりそうはいかないみたいだ。 「ひ、火拳だ! あいつは火拳のエースだ!」 「捕まえろッ!」 「どちらも処刑命令が下りている!殺せッ!」 銃を次々と構える海軍。 回りに出口は1つしかなく、しかもそこはかなりの厳重さだ。 ゆいを抱き抱え、逃げようとするエースだが、動きが止まる。 出入口の扉が開いた。 その瞬間、海兵が次々と倒れた。 きつい覇気を放つ奴が入ってきた。 「ゆいちゃん、生きとるかぁ?」 「じ、じじい!」 「ガープさん!」 覇気を放った人物、それは紛れもなく海軍中将であるガープであった。 その光景に、意識のある2人は驚く。 きっとこんな事をしたら、ただではすまないはず…! 「がははっ、若いのう。 それよりほれ、エース。」 エースに向かってガープは物を投げた。 何だか解らないが、受け取ったエースはそれが何だか気づく。 「鍵だ…。 ゆい、今開けてやるからな。」 ゆいを下ろし、海楼石の手錠を外すエース。 それを見守るガープ。 何とも不思議な光景だ。 ゆいの手錠が無事に外れれば、エースはガープを見て言った。 「なんだか知んねぇけど、サンキューなじじい!」 「ゆいちゃんの為じゃ。 次はないと思え。」 「ありがとう、ガープさん!」 解放されたゆいは、ガープにぺこりとお辞儀をした。 ← | → |