歴史上最高の脱獄劇(4/8) 先程までの自信が一気に失われた気分だ。 絶望がゆいの脳天から降り注いだ。 息を飲み、死ぬ覚悟を決める。 いずれは殺される運命なのだ、脱獄人生がとても誇らしく感じられる。 台の上へと突き出されるゆいは、その場に座らされる。 まるで新聞で見た、ロジャーの公開処刑の時みたいだ。 まさか、処刑でこの人生の幕を閉じるだなんて思っていなかった。 「言い残す事はないか?」 「…ない。」 目を閉じた。 さっきまでは、ここで死ぬと思ってなかった。 ―言い残す事はないか?― いっぱい有りすぎて、言いきれない。 せめて、あと少しだけエースと一緒にいたかった。 せっかく仲間にしてくれたのに…本当にごめんなさい。 ただいま、 おかえり。 そんな会話、わたしには夢でしかないのだ。 行ってきます、も言わなかったわたしに、そんな事を言って貰えるわけがない。 なぜか、みんなの事を思えば涙腺が緩む… 嫌だ、 死にたくない。 振り上げられる槍の音に、鼓動が速くなる。 ああ、もういいや。 1日も早く処刑されるだなんて、エースだって親父さん達だって思ってないよね。 仲間殺しの黒ひげを仕留めただけで、ここは満足して死のう。 ビュンッ 振り下ろされる槍の音。 鈍い音が部屋に響いた。 「…なに諦めてやがる!」 ← | → |